コパ・アメリカ2019 ブラジル代表のメンバー・システム・戦術

2019/06/14

コパ・アメリカ ブラジル

t f B! P L

2015コパ・アメリカではベスト8、2016コパ・アメリカ・センテナリオではグループステージ敗退、2018ワールドカップではベルギーに敗れベスト8と依然として低迷の続くブラジル。

現在はコパ2016後に就任したチッチ監督が引き続き指揮を執っており、2020W杯へ向けて安定した体制を築くためにも、今大会は少なくともベスト4には入りたいのが現状だ。

ブラジル代表メンバー【ネイマールの不在がどう影響するか】

監督 チッチ
ポジション 背番号 名前 18-19所属クラブ
GK  1 アリソン・ベッカー(リバプール
GK 23 エデルソン・モラレス(マンチェスターC
GK 16 カッシオ(コリンチャンス
DF  4 マルキーニョス(パリSG
DF  6 フィリペ・ルイス(アトレティコ
DF 12 アレックス・サンドロ(ユベントス
DF 14 エデル・ミリトン(ポルト
DF  3 ミランダ(インテル
DF  2 チアゴ・シウバ(パリSG
DF 13 ダニエウ・アウベス(パリSG
DF 22 ファグネル(コリンチャンス
MF  5 カゼミーロ(Rマドリー
MF 17 フェルナンジーニョ(マンチェスターC
MF  8 アルトゥール(バルセロナ
MF 15 アラン(ナポリ
MF 18 ルーカス・パケタ(ミラン
FW 21 リシャルソン(エバートン
FW  7 ダビド・ネレス(アヤックス
FW  9 ガブリエウ・ジェズス(マンチェスターC
FW 20 ロベルト・フィルミーノ(リバプール
FW 19 エベルトン(グレミオ
FW 11 フィリペ・コウチーニョ(バルセロナ
FW 10 ウィリアン(チェルシー

23名の選手のうち、チッチ監督が指揮した2018W杯から引き続き14名が選ばれ、2016コパからの6名(アリソン、マルキーニョス、フィリペ・ルイス、ミランダ、カゼミーロ、コウチーニョ)らは現在も主力選手として試合に出場している。中盤~前線はアルトゥールリシャルソンら若手への入れ替わりも進んでいるが、守備陣に関してはベテランを揃えて安定感を重視している印象だ。

攻撃面では核を担うネイマールが大会前に行われたカタール戦でタックルを受け負傷退場。その結果、右足首じん帯断裂で代表離脱が決定した。所属するパリSGでは今季2~4月中も負傷で離脱しており、終盤戦にやっと復帰したが結局コパ・アメリカ出場は2大会連続で叶わなかった。

これによってネイマール不在がチームにどう影響するのか、チャンスメイクを誰が務めるのか、開幕戦から注目したい。

今大会招集外のメンバー

マルセロ(Rマドリー)は今季の代表戦で負傷離脱を繰り返し3月以降は招集されず。ファビーニョ(リバプール)は2018ワールドカップ以降招集され続けたが今大会は選ばれず。2018ワールドカップメンバーからはドグラス・コスタ(ユベントス)、ダニーロ(マンチェスターC)、フレッジ(マンチェスターU)らが選外となった。

ブラジル代表の過去システム

2016コパ・アメリカ・センテナリオ

前任のドゥンガ監督が指揮したこの大会では1勝1分1敗でまさかのグループステージ敗退に終わったブラジル。第2節ハイチ戦こそ7-1と圧倒したが、エクアドル、ペルーとの2戦では決定機を仕留める選手が不在で無得点に終わり、攻撃力不足が露呈した。

エクアドル戦の先発メンバー

コパ・アメリカ2016 B組 ブラジル代表の選手・システム・戦績

2018ワールドカップ

チッチ監督のもとで組織化されたチームは、コウチーニョとネイマールを中心に、ブラジル本来の持ち味である攻撃を取り戻した。

守備でもカゼミーロ、ミランダ、チアゴ・シウバの中央は固く対人戦で負けず、4試合で1失点と準々決勝までは順調に勝ち進む。しかし、ベルギーとの一戦は序盤に先制されるとベルギーの守備固めの前に攻撃が停滞。で逆にカウンターから追加点を許し、その後も攻め続るが終盤1点返すのみに終わった。

今大会では前線の連動した攻撃はあったが、ガブリエウ・ジェズスフィルミーノが決めきれなかったのも確かで、守備面ではカゼミーロのベルギー戦出場停止も響いた。

スイス戦の先発メンバー

2019ブラジル代表の戦績

親善試合
3/23 △1-1 パナマ  得点:パケタ
3/26 ●1-3 チェコ  得点フィルミーノ、ジェズス、ジェズス
6/06 ◯2-0 カタール  得点:リシャルソン、ジェズス
6/09 ◯7-0 ホンジュラス  得点:ジェズス、チアゴ・シウバ、コウチーニョ、ジェズス、ネレス、フィルミーノ、リシャルソン

本大会(グループステージ)
①6/15 ◯3-0 ボリビア  得点:コウチーニョ、コウチーニョ、エベルトン
②6/19 △0-0 ベネズエラ
③6/22 ◯5-0 ペルー  得点:カゼミーロ、フィルミーノ、エベルトン、アウベス、ウィリアン

本大会(ノックアウトステージ)
QF 6/27 △0-0(PK4-3)パラグアイ
SF 7/03 ◯2-1 アルゼンチン  得点:ジェズス、フィルミーノ
F 7/07 ◯3-1 ペルー  得点:エベルトン、ジェズス、リシャルソン

コパアメリカ2019 ブラジル代表の戦術分析

GS首位突破後の準々決勝では、スコアレスドローでPK戦にまでもつれ込みながらもパラグアイを破り、準決勝ではアルゼンチンとのライバル対決に勝利し決勝進出。決勝ではGSで大勝したペルー相手に再び勝利し、2007年以来となる3大会ぶり9回目の優勝を果たし南米王者に返り咲いたブラジル。

今大会のブラジルはとにかく強固な守備組織が目を引いた。6試合中失点はPKによる1という数字を見てもそれがわかるだろう。そこで、今回はどのように守備組織を構築していたのかを解説していきたい。

リスクを負わず安定感のある試合運びを継続したブラジル代表3つの要素

今大会でチッチ監督が実践したのは、攻撃的なタレントの力を全面に押し出す従来のセレソンの戦い方ではなく、相手に付け入る隙を与えない試合運びだった。これはグループステージ初戦から一貫していて、ある意味慎重すぎるというくらいリスクを排除した戦いを徹底していた。その主な要素をポジションごとに3つ紹介する。

1.最終ライン4枚の維持

ブラジルのサイドバックと言えば過去も現在も攻撃面で重要な要素を占め、欧州ビッグクラブでも存在感を見せている。一方で守備時は高い位置取りを続けそのスペースを突かれるという場面もよく見られるが、チッチ監督は今回その攻守のバランスを維持することに注力した。

今回主力として出場したダニエウ・アウベスフィリペ・ルイスの両サイドバックも、ボール保持時には後方での組み立て参加に留め、果敢なオーバラップはあえて避けることで安定感を生み出していた。これによって全試合に先発したマルキーニョスチアゴ・シウバの両センターバックと共に4枚が最終ラインに残り、相手にカウンターのチャンスを与えなかった。

2.中盤2枚の維持

同様の事が中盤においても言え、基本布陣となる4231の2枚のボランチを横に並べ中央からの攻撃を塞いだ。

今大会はカゼミーロアルトゥールが6試合中5試合に先発しコンビを組んだが、カゼミーロはRマドリーでの仕事と同様に後方に待機し中央攻撃の芽を潰し、アルトゥールは前線4枚との間を埋める役割を担った。

攻撃時に関してもアルトゥールはあくまで中盤でパスを散らし役がメインで、攻撃から守備への以降の際に前線にいて守備の枚数が足りないといったシーンを作ることを避けていた。

3.前線の守備意識

最終ライン4人と中盤の2人に加えて残った前の選手4人に関しても守備での貢献が光った。

相手のビルアップに対してのチェックはもちろん、奪われてからのカウンターに対しても即寄せに行き簡単に前に運ばせない積極性を見せた。中盤サイドの選手はもちろんだが、1トップに入ったロベルト・フィルミーノもリバプールでの活躍同様にプレスバックでボールホルダーを追いかけ、奪われたら奪い返しにスプリントし潰すという攻撃以外での重要性が存分に発揮された。

このように11人全員に守備を強く意識させ試合を展開してきたチッチ監督率いる今大会のブラジル代表だった。

ネイマールを欠く中で勝負を決める攻撃陣の役割

ここまでは守備組織について話してきたが、2016年のコパ・アメリカを率いたドゥンガ監督、チッチ監督に交代してから挑んだ2018年W杯でも組織を重視したチーム作りは行っていた。ではなぜ今大会は勝ち上がれたのかだろうか。

ひとつは攻撃陣にこれまでよりは経験のある選手が揃ったという点。2018W杯以降もフィルミーノガブリエウ・ジェズス、コウチーニョらは欧州で経験を積んでおり、最後までしぶとく戦い続ける姿が見られた。

とはいってもゴールレスドローの試合が2試合あり、大会全体を通しても決定機で決めきれない場面は目立った。上で挙げた3人も得点は決めたが個の力で打開する場面は少なく、攻撃面では決して満足できる内容だったとは思わない。逆に言えばそういった状況でも点を決めて優勝したというのも事実で、今大会に出場した日本と比べてもこれこそが真の実力と言えるのかもしれない。

2つ目の理由はライバル不在の大会だったということ、決勝で当たったペルーにはGSで大勝しており力の差はどう見てもあったし、アルゼンチンに関してはチーム組織としての成熟度が断然違った。

そういった点でブラジルは攻守ともにバランスが整い組織化されていたので優勝したことに驚きはないが、同時にパラグアイ戦のPKで負けていても驚きはしなかった。

ネイマールが直前で離脱したことを考えれば致し方ない部分もあるが、2022ワールドカップで勝ち上がっていくためには攻撃陣のさらなる成長が求められるだろう。エベルトンのように今大会で台頭してきた選手がいる一方で、初戦から2試合先発したリシャルソンダビド・ネレスら若手選手は期待された結果は残せなかった。

それと共に、安定感を見せた36歳のダニエウ・アウベス、34歳のチアゴ・シウバ、33歳のフィリペ・ルイスらベテラン守備陣が入れ替わった時にその強度を保てるのかも重要なテーマになってくる。

コパアメリカ2019 ブラジル代表のグループステージ試合分析

①6/15 ◯3-0 ボリビア 得点:コウチーニョ、コウチーニョ、エベルトン

前半なぜ苦しんだのか

終わってみれば3-0と快勝したブラジルだが、前半は無得点で枠内シュート1本と決してうまくはいかなかった。

今回の中盤はカゼミーロとフェルナンジーニョと守備的な2枚を起用し、サイドにはアタッカータイプのリシャルソンとネレスを配置。リシャルソンは序盤から積極的に仕掛ける場面があり、サイドバックのダニエウ・アウベスやフィリペ・ルイスらも含めてクロスの形もあったが、中央でゲームメイクできるのはコウチーニョのみで、連携のある打開は見られなかった。

そのため、守備に人数かけたボリビアのブロックを崩すような攻撃が前半はできずに終わる。

後半得点を重ねられた理由

そのような状況ながら後半開始直後に先制することに成功。この場面ではコウチーニョがボリビアの守備ブロックが整う前にフィルミーノにパスを入れられたことが大きかった。つまり唯一ゲームを作れるコウチーニョが仕事をしたことで先制点を呼び込んだということだ。さらにVARのおかげでPKを得られたことも付け加えておく。

ボリビアにとっては先制されたことで守備を固めるだけでは勝ち点は得られなってしまった。こうなると個で勝るブラジルが勢いを増し、守備でも中央でカゼミーロとフェルナンジーニョが対人戦の強さを見せ相手の攻撃を止め、後半も流れを渡さずに3-0で開幕戦を勝利で飾った。

6/19 △0-0 ベネズエラ

なぜ得点を奪えずに終わったのか

ボリビア戦の前半も苦しんだブラジルだったが、ベネズエラ相手にもその流れは続いた。

この試合ではフェルナンジーニョに代えて大会前に負傷していたアルトゥールが先発復帰した。アルトゥールはより起点となってパスを散らしてボールを運べる選手で、ボリビア戦のような停滞感は消えるかと思われた。

実際序盤は相手の中盤と最終ラインの間に縦パスを通す場面も多く見られ、攻撃は機能していた。ところがそこから先の展開がないため、良い位置でシュートを打てる場面は少なく、前の試合に続いてサイドから連動した攻撃もなかった。

後半開始からリシャルソンに代えてガブリエウ・ジェズスを投入。これによってジェズスが積極的に前で仕掛ける場面も増えシュートチャンスを生み出したが、52分のネレス、57分のジェズスとチャンスで決めきれず。

さらに61分にはジェズスの仕掛けからフィルミーノを経由して自らシュートに持ち込みゴールを決めたが、これはVARでフィルミーノがオフサイド判定。

72分にはネレスに代えて開幕戦でゴールを決めたエベルトンを投入し得点を狙い、87分にはそのエベルトンの左サイドからのクロスにコウチーニョが走り込みゴールを決める。しかしこれもVARでオフサイドとなり、今日二度目のノーゴール判定に終わった。

守備に関してはサイドバックも比較的後ろに残りセーフティな布陣を保持し、アルトゥールやフェルナンジーニョも前線に飛び出していくことはないので安定はしている。つまり、攻撃は前4人での崩しが前提であって、崩しのバリエーションは少ないというのがここまでの印象だ。

③6/22 ◯5-0 ペルー 得点:カゼミーロ、フィルミーノ、エベルトン、Dアウベス、ウィリアン

5得点で大勝の理由

ここまでの2試合では優位に進めながらも攻撃人数やアイデアの少なさもあって順調には見えなかったブラジルだが、ペルー相手に5得点と攻撃陣が活性化しグループステージ1位で突破を決めた。

この変化の理由は単純で、序盤に先制点が取れたということである。

ボリビア戦でもそうだったように、先制すれば相手も自陣で構えるだけにはいかず、そういった展開になればスペースを生かした個人突破も可能となり、ブラジルの特徴を生かした攻撃も可能となる。その先制点を12分のコーナーキックからカゼミーロが決めたことが大きな勝因だ。

さらに19分、相手GKガジェセのミスを逃さずフィルミーノがインターセプトし、追加点を挙げて一気に優位に立ち試合を決めた。守備は安定しているだけに、先制すれば相手の攻撃も抑えられるというのが、少なくともグループステージの対戦相手に対しては見られた点だった。

コパアメリカ2019 ブラジル代表のノックアウトステージ試合分析

準々決勝 6/27 △0-0(PK4-3)パラグアイ

カゼミーロが累積警告で出場停止となり、フェルナンジーニョもペルーに続いてベンチ外となったため、ペルー戦で途中出場したアランを先発起用したブラジル。ポジションに変わりはなく、組み立て役のアルトゥールをサポートする形で守備的な役割を担った。それ以外の先発陣はペルー戦と同様のメンバーで挑んだ。

効果的な打開策なくゴールレスに終わる

この試合は最後まで点が入らずPK戦(今大会延長戦はなし)にもつれ込んだが、その理由はなんだったのか。ひとつ挙げられるのがパラグアイが守備を重視した布陣を敷いてきたことでシュートチャンスを生み出せなかったことだろう。

ブラジルは序盤からラインを上げ、後方の6枚で攻撃を組み立てボールを支配したが、それに対してパラグアイは前線のデルリス・ゴンサレスアルミロンこそチェックに行くも、後ろの8人は44ブロックを維持した守備を維持した。仮に一人が外されてもそこから追いかけ、周りの選手もカバーも入る集中力を見せ得点を許さなかった。

こうなると手詰まりになるのが今大会のブラジルの傾向でもある。アルトゥールが中盤で左右にパスを散らし相手を揺さぶりフィルミーノが下がって相手を引きつける。そこまではいいが、サイトアタッカーのガブリエウ・ジェズスエベルトンは個の勝負で勝てず、ドリブル突破で打開することができなかった。そのため相手のゴール付近で怖さがなく得点は入らなかった。

唯一、トップ下に入っているコウチーニョはペナルティエリア内に走り出しシュートチャンスを作り出していて、試合を通して両チーム最多の7本のシュートを打ったが、ゴールには結びつかず。バルセロナでも調子の上がらなかったコウチーニョは、動きこそ良いものの試合を決める仕事は果たせなかった。

後半に入ってパラグアイのバルブエナが退場したことで猛攻に出たブラジルだが、決定機でガブリエウ・ジェズスが外すなど決め手に欠き、アディショナルタイムには後半アランに代わって途中出場したウィリアンが左からフィルミーノとのパス交換で打開しシュートに繋げるも惜しくもポストに当たりゴールならず。

その一方で、パラグアイはシュート5本の枠内1本で試合を終えており、ブラジルは相手に攻撃をさせない試合を見せている。内容で見れば勝ち上がるべきなのはブラジルだったが、運も絡むPK戦で辛くも準決勝へ進んだという試合となった。

準決勝 7/03 ◯2-0 アルゼンチン  得点:ジェズス、フィルミーノ

ここまで比較的強豪と当たることなく勝ち上がってきたが、準決勝でライバルでもあるアルゼンチンとの対戦することになったブラジル。

カゼミーロが累積警告から復帰し、フィリペ・ルイスがパラグアイ戦で負傷しアレックス・サンドロが入った以外はパラグアイ線と同じ先発メンバーとなった。

ジェズスとフィルミーノの個性が生きる形

この試合での注目は守備面ではメッシやアグエロら今大会初めて強力なアタッカーを擁するアルゼンチン相手にもブラジルが対応できるのか、攻撃面ではここまで十分な仕事を果たせていないアタッカー陣が点を決められるのかという点だった。

そのような中で、まず仕事をしたのがガブリエウ・ジェズスロベルト・フィルミーノの2人だ。これまでの試合ではスペースを消されなかなか前線で思うようなプレーをさせてもらえていなかった両選手だったが、アルゼンチン戦では序盤から互いに激しいプレスで主導権の奪い合いが続き、相手が前に出てきたことで持ち味であるスペース流れてボールを受ける動きが機能した。

先制点のシーンでは、今大会バランスの取れたポジショニングで安定感のあるダニエウ・アウベスが縦に持ち出したタイミングも良かったが、その後にフィルミーノが右に流れパスを受け、ガブリエウ・ジェズスが空いた中のスペースでで受ける流動的な動きで相手のマークを外して見せた。

本来クラブで見せているような一瞬の飛び出しがここに来てやっと見られたというシーンとなった。

重心を下げた自陣でのブロック構築でアルゼンチンの攻撃を遮断

先制点を奪えたことでプラスに働いたのが、これまでも見せてきた守備の安定感だった。攻めてくる相手に対して守備ブロックを構えて対応し、アルゼンチンはボールは持てるようになったが、打開できずにメッシが下がって受けに回る回数も増えていった。その結果、前半はアルゼンチンを枠内シュート0本に押さえ込むことに成功した。

後半開始から試合展開に絡んでこなかったこともあってかエベルトンを下げてウィリアンを早々に投入。ビハインドのアルゼンチンも当然攻めに出る中でハイテンポな試合が続き、61分にはマルキーニョスが負傷しミランダと交代というアクシデントにも見舞われる。

それでも慌てないだけの経験をベテランのミランダは積んできており、フィリペ・ルイスの代わりに入ったアレックス・サンドロ含めて選手層の厚さを感じさせた。

終盤には焦るアルゼンチンに対し、ジェズスがペッセッラからボールを奪うとそのまま仕掛け、最後はパスを受けたフィルミーノが追加点を奪って勝負を決めた。

その後はジェズスに変えてアランを投入し、守備枚数を増やしてしっかり逃げ切ったブラジルが実力の差を見せつけ決勝へ進出した。

決勝 7/07 ◯3-1 ペルー  得点:エベルトン、ジェズス、リシャルソン

決勝の相手となったのはGS3節で対戦し5-0と圧勝したペルー。そのためブラジル優位と見られていたが、結果的に流れは変わらずブラジルが勝利し王者に返り咲いた。

安定した守備を崩さず

序盤からペルーは前に出て攻撃的な戦いを挑んだが、これまでの試合でもそうだったように、中盤の分厚いブロックで受け止め、そこからパスで組み立て攻め込む個々の技量の高さでブラジルは今大会どこよりも秀でていた。

前半は2-1と点の取り合いになったようにも見えるが、試合をコントロールでしていたのはブラジルだった。前に出てきた相手をしっかりコンパクトな中盤ブロックで封じ込め先制に繋げ、その後も攻め込んでくるペルー相手にPKの失点こそ喫したものの、すぐさま勝ち越し流れを断ち切った。

この2得点はどちらも右サイドバックのアウベスの攻撃から始まっている。今大会は中盤での組み立てに徹し、攻守にバランスの取れたプレーを続けており、大会MVPに選ばれたのも納得の出来だった。

前線のフィルミーノジェズスに関しても特徴が生きる展開を見せた。フィルミーノは前線でパスを受け、奪われても即取り返す守備。ジェズスはスペースを見つけて走り込む相手の守備を崩す動き。どちらもクラブチームでも見せる動きが代表でもしっかり生かされていたのは大きい。

後半は前に出たいペルーに対し、ブラジルもボールを保持する展開にシフト。その流れでコウチーニョが積極的にシュートを打っていくが追加点は決められず、ガブリエウ・ジェズスが70分に2枚目のイエローカードで退場というアクシデントにも見舞われる。

それでもブラジルが崩れないのは人数を後ろに残しているから。このリスク管理を徹底し、終盤にエベルトンがアルトゥールとのワンツーで抜け出しPKを奪取。これを途中投入のリシャルソンがしっかり決め、試合を終わらせた。

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