7.アジアカップ②日本vオマーン分析~初戦から改善できた点とできなかった点~

2019/01/17

試合分析 日本代表

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アジアカップ初戦のトルクメニスタンでは苦戦しながら3-2で勝利した日本。続くオマーン戦でも1-0と僅差での勝利ながら2連勝でまずはグループステージ突破を決めた。

6.アジアカップ①日本vトルクメニスタン分析~2点リードから不安な展開~

オマーン戦の日本代表先発メンバー

初戦では連携面で不安定さを見せていた柴崎岳と冨安健洋の中盤のコンビだったが、大会前に体調不良で出遅れた遠藤航がオマーン戦から中盤に復帰。これによって冨安を本来のセンターバックに戻し、アジアカップ前に機能していたメンバーが揃う。

ところが、前線の大黒柱である大迫勇也が臀部の負傷で試合に出られない状態で、森保監督は前日会見で代わりの選手が入ることを明言していた。

442のシステムを変えないとするならば、考えれるメンバーは武藤嘉紀か北川航也のどちらかということになるが、先発にはこれまでの親善試合でも4試合(1先発3途中)に出場していた北川が起用された。

トルクメニスタン戦で効いた早いタイミングでのミドルパスを多用

相手に縦パスを読まれ、攻撃の組み立てに苦しんだ初戦からの教訓か、あるいは前線で相手を背負って受け手となれる大迫がいないためか、今日は早い段階で相手の最終ライン裏へのパスを入れる意識を強めた日本。

序盤から効果的なパス出しで、裏に走り込んだ南野拓実が多くのシュートを打てる場面を作り出した。

その流れを生かし、26分に原口元気がPKを決め日本が先制。初戦の先制時にも見られた原口の左サイドからの仕掛けで、堂安律→南野と繋ぎシュートチャンスを作り出し、GKルシャイディに弾かれるも原口が走り込みPKのチャンスを得た。

この場面でも原口、堂安、南野は連動した動きを見せており、中島翔哉の不在を感じさせない攻撃はできている。あえて言えば南野がひとつでも決めていればもっと楽な試合になったというところか。それでも積極的にチャレンジしていく姿勢は評価できるものだった。

また、吉田麻也はこの攻撃の起点となる高精度のミドルパスを何度も通している。相手がチェックにこないことでフリーでパスを出せる状態にあったことは確かだが、タイミングも含めて理想的な状況を作り出していた。

オマーンにも研究されていた日本の戦術

一方で今日も不安定さを見せたのが、中盤中央の攻守のバランスだ。遠藤が復帰しウルグアイ、ベネズエラ戦でも組んだ柴崎とのコンビが戻ってきたが、トルクメニスタン戦でも見られた柴崎の縦パスのインターセプトからカウンターを食らう場面を何度も繰り返している。

柴崎がボールを受け、前線の選手が相手のライン間でパスを受ける態勢に入り、そこに縦パスを出す。この一連の流れはこれまでの親善試合でも多く見せており、相手国も研究しパスの瞬間を狙って詰めてきている。

遠藤もこの攻撃に絡んでいくため高い位置に走り込むが、そのぶん後ろはセンターバック2人だけとなってしまう。さらに、日本は両サイドバックの長友佑都と酒井宏樹も高い位置取りで攻撃参加するため、尚更カウンターを食らいやすい状況ができてしまう。

勝つためには当然攻める必要性はあるが、攻撃を完結しきれなかったときの守備には問題を抱えたままだ。

相手の人数を見て上がらない、あるいはカバーに入るという選択、さらに取られたあとにボールホルダーに誰が詰めて誰がパスコースを消すのか。全体の舵取り役である遠藤と柴崎に求められることは多く、瞬時に判断して誰よりも早く動き出す必要がある。

攻撃のコンセプトがある程度全体で共有できている中で、どこまで守備のリスクを下げられるのか。森保監督が失点覚悟で攻撃的なチーム作りを掲げているなら問題は別だが、全員に守備での貢献も求めると発言している以上、修正必須だ。

大迫不在で北川・武藤の働きは?

オマーン戦で試合前から注目されたのが、負傷の大迫に代わりに誰が出場するのかという点。

この試合では北川が先発し、武藤がその北川に代わって後半途中から出場することとなった。すでに日本代表で実績を残す大迫に対して、2人はどの程度仕事ができただろうか。

森保監督は代役の選手に「攻撃の選手として得点を奪う・絡むプレーで結果を出してもらいたい」と語っていたが、その観点からすると2人の評価は満足できるものとはならなかった。

特に北川は試合全体を通してなかなかパスを受けられず、裏へ抜け出すタイミングも周りの選手とテンポがあっていなかった。例えば、少し下がってDFを引き出し、前線にスペースを作ってから抜け出したい北川に対し、出し手はもっと早いタイミングでの抜け出しを期待していたためパスは通らない場面が見られた。

後半9分にはトルクメニスタン戦の失点場面で見られたのと同じように、スローインを受けたところを奪われるなど良いところを見せられず、後半11分武藤と交代。

森保監督体制となってからもコンスタントに出場機会を得ているだけに、堂安や南野のようにもっと主張して積極的に点を狙いたいところだ。

武藤に関しては大迫のように下がってパスを引き出す、あるいは裏に走り込みパスを受けて相手のラインを押し下げる働きはできていた。出場時間も限られ、後半1点リードでリスクを負わない試合展開になっていく状況だったことも確かで、今後の試合に期待したい。

また、伊東も後半終盤に堂安に投入され、右サイドからドリブルで持ち上がり決定機を作り出した。決めていれば完璧な展開であり、縦の突破ワンパターンなので試合開始からの起用は難しいが、ジョーカーとしての役割はこの試合でも見せた。

終盤は日本が試合を終わらせる運び

勝ち上がるための割り切った戦いができず、理想とする試合展開を追い求め結果を出せなくなる事がある日本代表。しかしそこはサンフレッチェ広島時代は手堅い試合運びを見せ、J1優勝を成し遂げてきた森保監督。

トルクメニスタンでは3-1のリードから1点差に追いつかれ、チーム全体で落ち着かない場面が見られたが、オマーン戦では試合を終わらせに行く試合運びをしっかりと見せた。

試合後に遠藤が語ったように、442のブロックを自陣で作ったあとに寄せが甘くなる場面は見られたが、全体で守備にシフトしカウンター狙いに絞る意識は持てており、そこは初戦から改善された点として評価すべきだ。

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