2-3.日本vパナマ、ウルグアイ戦を振り返る~強敵相手に互角に立ち合えた理由~

2018/10/21

試合分析 日本代表

t f B! P L

今回の招集メンバー等、試合前の情報はこちら2.日本vパナマ、ウルグアイ戦で注目したいポイントにも書きましたが、今回は試合後のレビューです。

今回の2試合では、GKのシュミット・ダニエル以外は追加招集となった川又と北川も含めて全員に出番を与えた森保監督。

まず、初戦のパナマ戦では欧州組の大迫、吉田、原口を加え、若手の冨安や前回出番の限られた伊東、三竿らもテスト。2戦目となったウルグアイ戦には、パナマ戦にも先発した大迫、吉田に加え、酒井、長友、柴崎らW杯出場組を前回のコスタリカ戦のメンバーに組み込み、現状ベストな布陣で強敵に挑んだ。

この2試合で印象に残ったのは、世代交代を図っている最中であるにもかかわらず、時点で全員の意識共有が思ったよりもできているということだ。

その理由としてはまず、森保監督が日本人であり、日本語でコミュニケーションが取れることや、選手に特徴を理解し起用できること。さらにハリルホジッチ監督時代の対人戦の激しさ、そして西野朗監督時代のアグレッシブな攻撃性といった戦術をしっかり組み込んで継続性のある指導をしていることが挙げられる。

また、ベースとなるシステムが442であり役割が比較的明確なことで、守備から攻撃、そして守備と複雑な動きを取り入れず試合に専念できている。その意味で広島時代のような3バックシステムを未だ導入していないのは理にかなっていると言えそうだ。

このように選手を使い分けながらも、結果的には2試合ともに勝利し、就任から3連勝と上々のスタートを切ることに成功。ここではそのパナマ戦とウルグアイ戦の2戦で印象に残ったポイントを解説していく。

2018/10/12 日本vパナマ ○3-0

得点:南野拓実 伊東純也 OG

序盤は互角の展開で前回のようにはいかず

W杯メンバー10人を起用してきたパナマは序盤から寄せが早く、ビルドアップ時もゆっくりとしたペースでボールを回す時間が長いこともあり、日本が主導権を得ることができなかった。

また、日本の前線のメンバー構成が変わったこともあり、コスタリカ戦で見られたような2列目の流動性やコンビネーションがみられず、なかなかパナマのブロックを崩せない時間帯が前半は続いた。

青山は起点となりインターセプトから効果的な縦パス多く入れる

そのような中でも中盤から効果的な縦パスを入れていたのが、中盤で三竿とコンビを組んだ青山敏弘だった。

相手の縦パスをインターセプトし、そこから一気にカウンターに移る起点となる縦パス、さらには日本がボールを保持したときには周りを使いながらパスワークで崩すなど、随所に顔を出し攻撃の軸となった。

前半終盤の南野の得点はまさにその青山からの形であり、質の高いプレーを披露してみせた。こうして日本は1点リードして前半を終えることに成功。

後半運動量増え相手の布陣間延びし原口が躍動

前半の終了間際から躍動し始めたのが左サイドハーフに入った原口元気だ。前半序盤こそ精彩に欠いたプレーも見られたが、相手の運動量が落ち、スペースができると徐々に動きが目立つようになった。

すると、次第に中に流れて受ける回数も増えていき、連動するかのように左サイドバックの佐々木のオーバーラップの回数も増え、日本の攻撃のバリエーションが増えた。

原口は守備でも運動量が増え、攻撃ではシュートを放つなど後半の2得点に絡み、クラブでの出場が少なくても存在感を十分に発揮しアピールした。

対して、右の伊東純也は裏やサイドのスペースを狙う動きはあるもののパス繋ぎに参加する回数は少なく、単独で縦に打開するしかない状況が多かった。

そんな中で初めて中に入ったゴール前の攻撃に絡んできたのが日本の2点目となるシーンだった。このように動きの幅が広がると相手も選択肢が増え守りにくくなってくる。

冨安の守備とビルドアップでの安定した貢献

守備面ではこの試合が代表デビューとなった19歳の冨安健洋が目立った活躍を見せた。昨年のU-20ワールドカップでもレギュラーとして出場し、今季もベルギーのシント=トロイデンでフル出場を続けており、すでに実力の高さは証明済み。

それでもA代表でここまで安定したプレーを披露できるのは流石だ。フィジカルの強い相手にも物怖じしない競り合いで相手の攻撃を弾き返し、ライン統率もしっかりこなす。

さらにはビルドアップで最終ラインから持ち上がり、縦パスを入れていく攻撃時の積極性も見せるなど、今後が楽しみなデビュー戦となった。

2018/10/16 日本vウルグアイ ○4-3

得点:南野拓実 大迫勇也 堂安律 南野拓実
ガスト・ンペレイロ エディンソン・カバーニ ホナタン・ロドリゲス

守から攻への切り替えを全員が意識

パナマ戦で勢いをつけられなかった前半から、打って変わってこの試合では開始から攻守に積極性を見せ試合に入った。その流れを生かして10分、中島の縦パスから南野がペナルティエリア内でワントラップでDFを交わすとそのまま仕掛け、早くも先制点を奪ってみせた。

その後も、442の守備ラインを高く保って中盤で奪いにかかる戦術で、中島と堂安が先発したコスタリカ戦同様に勢いを保って試合を展開し続け4-3で勝利。

全員守備、全員攻撃という部分でも今の代表は皆が意識できている。若手が入り世代交代したことで気を緩める選手が減り競争意識が高いこともその理由だろう。

以前は、中島や南野もアタッカーとして個性を出すために守備はおざなりといった感もあったが、今の代表ではアグレッシブに動き続けている。コンディションが良い今はもちろん、悪い時にもこれを維持できれば今後も安定した試合運びができそうだ。

ウルグアイは前線孤立

対して今回のウルグアイは攻撃面でなかなか効果的なシーンが作れずにいた。日本がしっかりブロックを構成しボールホルダーに寄せていたこともあるが、それよりも前線のカバーニとその後ろが連動せず孤立してしまっていたことが原因だろう。

序盤は最終ラインから前線へフィードを送り一発で打開しようと試みていたが、そこは三浦と吉田のセンターバックが対応しブロック。それが通らないとなると、今度は2CHのトレイラとベンタンクールの組み立てから前に繋ごうとしていたが、ともにボール保持位置が低く、バイタルエリアで受けるべきデ・アラスカエタも中央では受けられなかった。

後半からはデ・アラスカエタに代えホナタン・ロドリゲスを投入し、より2トップに近い形にして日本から2得点は奪った。しかしどちらも日本のミスからの失点であり、W杯でも見られたようにスアレス不在なると攻撃のレベルは落ちることは否めない。

前線4人の破壊力のある攻撃

コスタリカ戦でも魅力的な攻撃を見せていた日本だが、この試合では中島、堂安、南野、小林悠の前線4枚のセットから小林に代わって大迫勇也がトップに入った。

大迫といえば日本代表では以前から一人で背負って受け、そこから日本が攻撃に出るという形を作ってきた。トップに入れば当然その働きが求められるが、小林は代表戦では厳しいのか潰される場面も多かった。

ウルグアイ戦でもそのような状況はあったが、大迫はやはりしっかりとこなし、日本の2点目となるゴールを奪ってみせた。前線で受けてフィニッシュまで持っていく仕事はもちろん、パスの出し手役としても精度は高く、あとは再三あった決定機を決めていれば完璧だった。

中島、堂安、南野もそれに応えるかのように躍動。中島は得点こそなかったものの序盤から仕掛けて積極的にシュートを放ち守備陣を切り崩し、南野はここ3戦で4ゴールと決定機をゴールに結びつけ、堂安も代表初ゴールとそれぞれが持ち味を十分に生かしていた。

ホームとはいえ、対南米ウルグアイの守備陣相手でも怯むことなく仕掛け続けていたのが印象的だった。

彼らに加えて、両サイドバックの酒井宏樹と長友佑都の欧州組もここに加わりフィットし、共にオーバラップし相手を引きつける役割、そしてパスを受け前線の選手への出し手としての働きを機能させていた。組んですぐにアタッカーの良さを引き出せるあたり、さすがは経験豊富なベテランである。

ウルグアイはCBホセ・ヒメネスが怪我で負傷辞退、MFベシーノが試合直前に怪我とW杯主力メンバーの2人がいなかったが、それでも堅守が持ち味のウルグアイから4点を奪ったことは評価すべき内容だった

重要視していたはずのセットプレーとミスからの失点

ここまでは称賛しかないが、考えなければならない問題も残った。それはセットプレーと安易なミスから失点したという事実だ。日本代表はこれまでもこの課題を抱え続けてきており、無失点に抑えたパナマ戦後にも森保監督へのインタビューでこの件について触れられていたし、改善すべきだと語っていた。

まずはフリーキックをゴール前で合わされて1失点目。このシーンでは高い位置を取ったカセレスに対し柴崎がチェックに行くも寄せきれず、コースを消せずに縦パスを通される。そのパスにデ・アラスカエタが走り込み先に触り吉田が倒してしまうという展開だった。

この手のシーンは試合中よく起こり得ることであるが、高さに秀でていない日本にとってはそれすらもピンチになり得る。

個人的にはこの1失点に関しては仕方のない部分もあるかと思うが、問題は2失点だ。

2失点目は三浦が周りを確認せずGKの東口にバックパスし、それをカバーニに奪われるというまさに判断ミスから生まれた。遠藤の縦パスが相手の背中に当たり後方に跳ね返ってくるという場面ではあったが、吉田はしっかり前に蹴れというジェスチャーを見せており、出しておけばなんでもないシーンだった。

3失点目に関しては、2-4の状況で青山を投入した直後にやられてしまった、中盤で遠藤が潰されてからのカウンターでの失点。青山に関してははまだ流れに入れていなかったこともあるが、三浦はホナタン・ロドリゲスが左に流れるのを目視はしており、また吉田もジェスチャーでマークを指示しているため止めたい状況ではあった。

とはいっても3対3の状況を作られている時点で守備側は不利であり、カバーニの右へ引き付ける動きも見事だったことは付け加えておきたい。三浦もまだ先のある若手であり、本番となるアジアカップ、さらにはW杯本大会に向けて成長してもらいたいところだ。

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