チリ戦が北海道地震の影響で中止となり、コスタリカ戦がロシアW杯後の森保監督体制で初の試合となった日本代表。
招集メンバーは欧州リーグ戦が始まったばかりということもあり、W杯主力メンバーの招集は見送られた。国内組の大島僚太、山口蛍、杉本健勇は選出されたが負傷辞退となり、代役として天野純、守田英正(初招集)が呼ばれた。よって、最終的に海外組8名、国内組14名というバランスとなった。
試合の出来に関しては森保監督が試合前に「勝負にこだわって戦う」と話していた通り、まさにそれを体現した結果となった。ここではそのコスタリカ戦を見て目立ったポイントを5つに絞って語っていきたい。
招集メンバー
監督 森保一
GK 東口順昭 権田修一 シュミット・ダニエル
DF 槙野智章 遠藤航 植田直通 車屋紳太郎 三浦弦太 室屋成 佐々木翔※ 冨安健洋※
MF 青山敏弘 伊東純也 三竿健斗 中島翔哉 南野拓実 堂安律※ 伊藤達哉※ 天野純※ 守田英正※
FW 浅野拓磨 小林悠 ※は初招集
負傷辞退
MF 大島僚太 山口蛍 FW 杉本健勇
2018/09/11 日本vコスタリカ ○3-0
得点:OG、南野拓実、伊東純也
コスタリカ戦で目立った5つのポイント
①4バックを採用
システムに関しては広島時代、またすでに始動しているU-21日本代表で採用する3バックでなく4バックを紅白戦からテスト。実際に試合が始まってからも442の布陣で戦った。
これに関しては「柔軟に対応、さらに臨機応変にやってほしい」という狙いがあったのと、ロシアW杯でやったことを継続していくという意味合いが込められていたようだ。
3バックとなるとすでに戦術理解のある選手に絞られるというデメリットもある。また、志向の浸透していないチームで数少ない練習で結果を求めなければならなくなるため、そこは安定を求めたとも考えられる。
実際に結果と内容を踏まえてもまずは成功したと言ってよいだろう。
②ラインを上げ前線から連動してプレス
開始から見られたのは前線~中盤の選手らのコスタリカビルドアップに対しての追い込みだった。ハリルホジッチ監督時代はもちろん、その後の西野朗監督も前線からプレッシングには積極的だったが、今回もそれを継承した試合が見られた。
世界的にも当たり前のようになっている前線からのプレッシングだが、日本代表もその路線を継続していくようだ。
2トップの南野拓実と小林悠はもちろん、両サイドハーフの中島翔哉、堂安律も連動してボールホルダーを追い込み、さらに2CHの青山敏弘と遠藤航も敵陣まで出てパスコースを消す基本的な動きはできていた。
同時に最終ラインも高くし相手の前線に入るボールに寄せ相手に簡単に前を向かせず弾き返せていた。
これらの動きは初戦ということを考えても全体が試合を通して連動してできていたように思う。442というベーシックなシステムを採用したメリットが生きた形だった。
試合開始すぐの3分のコスタリカのビルドアップの場面から。まずバルガスが後方のドゥアルテに戻す①。この時日本は中盤4と前線2枚が構える状態。
後方のドゥアルテからバルガスが再びパスを貰い②、攻撃を作り直し中に入れる③が、この時すでに日本はラインを押し上げ。前線と中盤で囲い込むと同時に右SBの室屋が左WBのオビエド、下がって受けに来る左WGのラミレスへは三浦がしっかり寄せてプレッシャーをかけている。
③相手3バックのWBに対してはSH堂安、中島がしっかり対応
今回のコスタリカは541の布陣で日本に挑んできたが、そうなると両翼のWB(ウイングバック)がどのような位置取りをしてくるかが重要になってくる。
逆に言えば日本はいかに高い位置を取らせない守備(攻撃)をするかが重要となるが、その点でもSHの堂安律と中島翔哉は対応ができていた。
相手が自陣で組み立てる段階では前から詰めながら、ラインを上げて日本陣内に攻め込まれた時にはしっかりと下がって相手にプレスバックをかけ、後方の守備陣の負担を減らす。この基本的な守備をサボらず精力的に動いていたのが印象的だった。
相手に力強さがなかったことも確かだが、代表レベルでも守備をサボる選手はいるので今後に向けてのアピールとしては十分の出来だ。
④堂安、南野、中島の流動性のあるパスワークと仕掛け
攻撃面で目立ったのは堂安、南野、中島の3選手の積極性だ。どの選手もスペースに顔を出し、自ら仕掛ける気持ちも見せ、互いを使う連動したパスワークも見せていた。
特に中島は攻撃の核となり牽引し、何度も仕掛けては相手守備陣を打開。2点目も中島の左からの仕掛けで始まっていた。南野も前半39分に縦への飛び出しで決定機を作り、後半23分には得点も決め成長ぶりを見せる。堂安はゴールこそなかったものの後半14、19分とあと一歩でゴールというところにまで迫った。
欧州でも活躍し、代表の世代交代と共に4年後の中心選手にならなければいけない若手の活躍は今後の期待が持てるものだった。
⑤CHの青山敏弘と遠藤航の組み立てとポジショニング
現代サッカーにおいて守備時はアタッカーを削り味方の穴埋め、そして攻撃時はゲームメイクからフィニッシュに絡む仕事、と攻守において多くの貢献を求められる中盤センターのポジション。
これまでは10年に渡り代表で不動の地位を築き、キャプテンとしてチームを引っ張ってきた長谷部誠がいたが、ロシアW杯を最後に代表を引退。長谷部の後継者は誰だと言われ続け、結局ここまで来たことになる。現段階でこれと言えるほど存在感を示している選手はおらず、競争があると同時に不安要素でもある。
今回はW杯にも選ばれていた大島、山口、遠藤に加えて青山、三竿が選ばれたが、大島、山口は負傷で参加できず、基本的には遠藤、青山、三竿の3選手で争われることとなった。
青山も三竿もW杯直前のテストマッチでは西野監督に招集されており、今回も継続して選ばれた形ではある。特に青山に関してはそこで負傷し代表辞退することとなったわけだが、森保監督からは広島時代から勝手知ったる仲であり、今回はキャプテンも任された。
コスタリカ戦では青山が比較的後ろに位置し、カバーあるいはセンターバックとビルドアップがメイン、遠藤はもう少し前で前線とつなぎ役といったイメージでバランスを取っていた。
青山は序盤から落ち着いて周りを見ながらボール回しの起点となる場面が多く見られた。それ故に、時間が経つにつれてコスタリカ側も慣れて出だしを奪われる場面もあったのは確かだ。このあたりは次戦以降、周りとどうコミュニケーションを取っていくかが重要となりそうだ。
遠藤に関しては、序盤はコスタリカの突破に対し距離を詰めきれず前を向かせる場面も多かった。後半から運動量も増え、攻撃絡むパス交換も増えていき、2点目の南野のアシストへと繋がるプレーを見せた。あのシーンでペナルティエリアに走り込んでいったシーンはまさに求められているものであり見事だった。
チームとして始動しはじめたばかりであり、アンカーを置き3枚なのか、2枚で行くのかといったところも未知数だが、強豪との対戦ではここでいかに攻撃を止められるかが勝負どころになる。これからもそこを注目しながら試合を見ていきたい。