欧州各国の序盤戦を振り返る【スペイン・リーガ編】

2015/10/08

セビージャ バレンシア ラ・リーガ

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クラブ史上初の快挙で3強以外が首位へ躍り出る

揺るぎない2強体制を築くバルセロナとレアル・マドリー、そして近年はそれに次ぐ成績を残しているアトレティコ・マドリー。この3チームが序盤からスタートダッシュを切れなかったこともあり、2015-16シーズンのラ・リーガ序盤戦はビジャレアルがクラブ史上初の首位に立つことになった。
 

ビジャレアルとセルタの躍進

昨季6位のビジャレアルは、ヨーロッパリーグと並行してリーガを戦いながらもビルバオやアトレティコといった同等、あるいは上位のチームに勝利して2節から6節まで5連勝と好調なスタートを切り、リーガ首位に立った。4年目の指揮となるマルセリーノ・ガルシア・トラル監督が作り上げたチームは既存の選手と新加入組がうまく融合しここまで戦っているという印象だ。

強みはその安定感だろう。 リーグ戦7試合でここまで1失点以上許した試合がないというデータはそれだけ組織の構築がうまくいっている事実を物語っている。最終ラインのマリオガスパールエリックバイイービクトル・ルイスハウメ・コスタ、そして中盤のトマス・ピナマヌ・トリゲロスブルーノ・ソリアーノジョナタン・ドス・サントスといったメンバーは昨季からチームに在籍しているため相互理解度も高い。

試合に出ている守備陣で唯一変わったと言っていいのが、PSGからローンで移籍してきたGKアルフォンス・アレオラだ。昨季の正GKセルヒオ・アセンホが故障離脱中ということもあり定位置を確保するに至っているが、早くも存在感のあるプレーを随所に見せ、フランスの各年代代表に選ばれてきただけの事はあるパフォーマンスを発揮している。

一方で攻撃的な選手はMFサム・カスティジェホ、FWロベルト・ソルダードレオ・バティストンセドリック・バカンブマティアス・ナウエル(下部組織上がり)と新加入選手で占められている。得点者を見てもソルダードが2点、レオが2点、バカンプが3点とそれぞれがバランスよく得点を挙げており、今後もコンスタントに決められるようであれば、守備が安定しているだけに昨季以上の成績も十分に狙えそうだ。


2位につけるのはなんとセルタである。ここ2シーズンは中位をキープしていたが、そこから上にはなかなか行けずにいた。そのチームが4勝3分けで無敗の滑り出しに成功。特に4節セビージャ、5節バルセロナと上位チームに連勝したことが好順位につけた大きな理由だ。

守備の安定しているビジャレアルに対し、セルタの場合は攻撃陣がチームを引っ張った。イアゴ・アスパス(4点)ノリート(5点)オレジャナ(2点)の3トップが積極的なチーム全体の守備でボールを奪い、そのまま仕掛けていく戦術がハマったバルセロナ戦(4-1)はその成果が出た試合だったといえる。

2年目となるエドゥアルド・ペリッソ監督のアグレッシブなサッカーをどこまで維持できるのかが、今後も上位をキープするキーポイントになる。欧州カップ戦がないぶん上位を争うチームよりは余裕があるはずだが果たして。


上位の常連であるバルセロナレアル・マドリーアトレティコも他チームを序盤から突き放すことはできなかったもののすぐ下に付けており、首位奪還は時間の問題と思われる。安定感で言えばここまで2失点のレアル・マドリーが最有力候補ということになるだろうか。この3クラブについては各々の記事で詳しく紹介していく。


不振にあえぐバレンシアとセビージャ

この3チームに続く存在である昨季4位バレンシアと5位セビージャだが、どちらもつまずいた。共に勝ち試合は2勝に留まりと負け越しており、得失点差もマイナスと不振にあえいでいる。バレンシアは3シーズンぶり、セビージャは5シーズンぶりのチャンピオンズリーグ参戦となった今季ではあるが、この成績を見る限りはその調整に苦労しているようだ。

特にセビージャの場合は一時は2分3敗で最下位にまで落ちるなど厳しい序盤戦となった。昨季までのヨーロッパリーグ2連覇の実績もあるが、CLはさらにハイレベルな戦いが待ち受ける。ユベントス、マンチェスターC、ボルシアMGと同組に入ったことでそれを実感させられていることだろう。

これまで得点源だったカルロス・バッカの移籍、さらにニコ・パレハダニエル・カリーソ、そして新加入のラミとCBを負傷し、中盤の核であるバネガまでそこに加わった。これら主力を相次いで欠いたことも大きく影響したのは間違いない。それでも7節、バルセロナに9年ぶりに勝利し復調のきっかけは作った。ウナイ・エメリ監督の残留、モンチSD(スポーツディレクター)の契約延長もあった今シーズンだけにここから巻き返しを図りたいところだ。

一方のバレンシアは試合外のチームの空気も良くはない。チームの不振によってオーナーであるピーター・リム氏、代理人ジョル・メンデス氏、ヌノ・エスピリト・サント監督へのサポーターからの反発は大きくなっているようで、それを収めるために1億ユーロの増資を決めるなど四苦八苦しているように映る。

増資をおこない戦力アップを図るにしても、冬まではこの戦力で戦うしかない。試合の結果を見ても、まだ上位チームとの試合をしていない状況で4得点とリーグワースト2位では厳しいか。

リーガ得点・アシストランキング【昇格クラブの健闘】

得点部門はレアル・マドリーのカリム・ベンゼマクリスティアーノ・ロナウドの2選手が上位にランクイン。不調と言われるロナウドだが、エスパニョール戦で5得点と荒稼ぎしてみせた。ちなみに今季リーガでの得点はここまでこの1試合のみに留まっている。

2012-13シーズン以降はソシエダの成績とともに下降線をたどっていたイスマイル・アギレチェだったが、今季は順調に得点を重ねている。5節グラナダ戦ではハットトリックも決めるなど、下位に低迷しているチームが浮上するためにも調子を維持したい。


アシスト部門は際立った選手はおらず、まだ横並びの状態となっている。そんな中であえて一人を挙げるとすれば、得点ランキングでも上位につけるノリートだろうか。スペイン代表にも選出され、バルセロナ移籍の噂が飛び交うなど、今季好調なスタートを切ったセルタの象徴とも言える存在だ。

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