準々決勝のベトナム戦では経験で勝る日本が、相手にペースを握らせることなく1-0で勝利し、準決勝に進んだ。
準決勝は2018ワールドカップにも出場し、カルロス・ケイロス監督のもとでメンバーを継続してアジアカップに臨んでいるイランとの対戦となった。
イラン戦の日本代表先発メンバー
○3-0 得点:大迫勇也 大迫勇也(PK) 原口元気
日本の先発メンバーは北川航也に代わってついに大迫勇也が復帰。ベトナム戦の後半途中でオマーン戦以来の出場ながら短い時間で存在感を見せ、改めて必要不可欠な存在だと証明して見せた。
それ以外はサウジアラビア、ベトナム戦と変わらぬ構成で、今大会のベストメンバーが揃った。
対するイランは、準々決勝の中国戦のイエローカードにより、左サイドハーフのアミリが累積警告で出場停止。それ以外はこちらも変わらぬメンバーで日本に挑んできた。
アズムンを完封した吉田と冨安の対人戦
今日一番の注目とも言えたのが、イランの最前線に配置された186cmのアズムンをいかに止めるのかという点だろう。
準々決勝のイランvs中国戦では何度も後方からアズムンへハイボールを供給し、そこからイランの攻撃が始まっていた。これまでの対アジアレベルの戦いにおいても、そういった縦のロングボール一発で失点してきた日本はこういった戦術を苦手としてきた。
そんな日本に対して、今回の試合でも当然のようにハイボールをアズムンに入れてきたイラン。しかし日本は冨安健洋(188cm)と吉田麻也(189cm)のCBコンビがそのボールをことごとく弾き返し、相手を前に進ませない。
この二人による防波堤が機能したことで、まずイランの攻撃の第一波を封じ込むことに成功した。
セカンドボールへの対応
弾き返したあとのセカンドボール争いにおいても日本は物怖じしなかった。アズムンがボールを収められなくとも、2列目のアミリ、デヤガ、ジャハンバフシュの3人がボールを拾い、再び攻撃に繋げるダイナミックな動きがイランの持ち味。
だが、そこでも日本の選手は全体でカバーし相手の攻撃を継続させない。特に中盤に入った遠藤航は精力的に動き、誰よりも早くボールに寄せ、柴崎岳と連動し相手の攻撃を摘んでいた。
こうしてイランは思ったような攻撃ができずに苛立ち始め、徐々にラフプレーも増えていき集中力をなくしていった。
大迫と南野の縦の連携
攻撃面でも今日は日本のパスが繋がる場面が多く見られた。
特に最終ラインの冨安、吉田から、中盤の柴崎、遠藤への縦パスが良く通り、前を向いた状態で前線の選手へパスを出せる状態が整っていた。
その理由はイランがこのスペースに対してプレッシャーをかけてこなかったからだ。
これまでの試合では、この中央ラインの縦パスを読まれてカウンターを食らい、日本のピンチに繋がるシーンが多かった。だが、今日のイランは自陣アタッキングサードに入るまではボールに食らいつかず、ゴール前で奪えばいいという形の守備体形で日本の攻撃を受けに回った。
フィジカルコンタクトに強みを持つイランだからこそできる策でもあり、ワールドカップでスペインやポルトガル相手に健闘を見せたのもこれを徹底したからこそである。
しかしながら、今日のイランは主導権を取るはずだった攻撃面が機能しなかったこともあり、攻守の切り替えに集中力を欠く場面も見られた。
さらに、日本の前線には大迫勇也という対人戦を苦にしないFWがいた。前線で下がってボールを受けては相手が寄せてくるとワンタッチで反転し縦パスを入れる。イランの激しいチャージにも全く動じず何度も攻撃の起点となる。
こうなると生きてくるのが南野拓実の裏への走り込みだ。56分の先制点の場面、さらに63分の追加点となるPK奪取の場面でも大迫のパスに南野が反応し相手の守備を切り崩し、後半は2-0と優位に試合を進めた。
2点リード後の勝ち切る試合運び
日本は2点リード後の60分に遠藤航、73分に酒井宏樹が負傷交代というアクシデントに見舞われた。代役として塩谷司、室屋成が投入されたが、2人は落ち着いた対処で相手の仕掛けに対応。
こういった交代では試合の流れに乗り切れずに穴となってしまうこともあるが、難しい終盤に向かう時間を耐えきった。
終盤には堂安に代えて伊東純也を投入。アディショナルタイムには前線のハイプレスでボールを奪い、原口→柴崎→南野と繋いで最後は原口が落ち着いてゴールに流し込み3-0。最後まで集中を切らさずに難敵イランに快勝し決勝戦へと駒を進めた。
今大会の中で最もうまく戦えた試合となったイラン戦。あえて不安な面を挙げれば、不用意なファールでセットプレーを与える場面が目立ったことや、権田修一のビルドアップ時のパスの判断だろうか。
セットプレーはどれだけ上手く進めていても一発で仕留めれれる怖さがあり、日本はゴール前の混戦に決して強い国ではない。
権田に関しては、セービングやハイボール処理といった面で他の選手より安定していること、さらにビルドアップに優れている代表クラスのキーパーがいないという問題がある。
パス能力はいきなり開花するようなものでない。今後も起用するのであればリスクのある後方でのパス回しはしないといった徹底を考える必要があるだろう。