W杯も終わりヨーロッパはリーグ戦、そして欧州リーグ・カップ戦が始まっている。ここでは18-19シーズンの欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス※2018年UEFAカントリーランキング順)の日本選手の顔ぶれとここまでの成績を振り返っていく。
1位.スペイン-ラ・リーガ 2選手
乾貴士(30) ベティス 先発4途中2試合 EL 途1
柴崎岳(26) ヘタフェ 先1途1
ボールを扱うテクニックの高さや攻撃への積極性が必須で、日本人にとって最も困難とされるラ・リーガを3シーズン戦った乾貴士。今季はエイバルから昨季6位のベティスにステップアップ移籍を果たした。
W杯での活躍も記憶に新しい乾だが、これまでの経験もあってか持ち味であるドリブルでのキレの良さを早くから発揮し、開幕戦から出場を続けている。それだけに早い時期にゴールと言う結果を出せば主力として十分やれるだけのパフォーマンスは見せている。
若い頃からテクニカルな選手だったとはいえ、エイバル時代から守備でのプレッシングも学び、欧州トップのリーガでこれだけ出場していることは素晴らしい。中村俊輔や清武弘嗣を始め、これまでも多くの才能ある日本人選手が苦労し早期に退団したことを踏まえてもその難易度は理解できるだろう。
一方、2部経由で昨季ヘタフェに移籍した柴崎岳は苦しんでいる。こちらもW杯では主力としてタフに戦ったが、開幕節での先発以降は7節終了時点で途中出場1試合と厳しい状態にある。
最大の問題は柴崎岳の出来以前に、チーム戦術とフィットしていないという点だ。ホセ・ボルダラス監督は柴崎の最適ポジションはインサイドハーフであるとし、チームはそのポジションを置く433は採用せず、442を基本に戦っていくと主張している。複数のポジションをこなしてこそ一流というのはもっともな話だが、2CHのポジションとなると守備時はフィジカルバトル必須となり柴崎の特徴としては厳しい。
開幕前から移籍の噂も絶えず、直近の2試合ではベンチメンバーからも外れ戦力外といった状態にまでなってしまった。スペイン移籍当初から何度も苦みながらも戦い抜いてきた柴崎だが、ここから再び逆境を乗り越えられるだろうか。
2.イングランド-プレミアリーグ 3選手
岡崎慎司(32) レスター 先0途3
吉田麻也(30) サウサンプトン 先0途0
武藤嘉紀(26) ニューカッスル 先0途6
レスターで4シーズン目となる岡崎慎司だが、ここまでは厳しい序盤戦となっている。リーグ戦での出場はわずか途中出場3試合で、9月25日のリーグカップ3回戦で先発はしたものの、そこでも途中交代となってしまった。
昨季も序盤戦はゴールを重ねたが、ボールポゼッションを重視するクロード・ピュエル監督となってからは序列が下がり、以前のように前線からのチェイシングで貢献するだけでは評価されなくなってしまった。若手FWの台頭もあり、チームが不振に陥らないかぎり出番は限られそうだ。
サウサンプトンで7シーズン目となる吉田麻也も、ここまでリーグ戦出場はゼロと苦しい状況だ。マーク・ヒューズ監督はここまでCBを固定して戦っており、その結果、吉田は試合に出られない状況が続いている。
とはいってもチームパフォーマンスは決して良い状態でなく、失点も多く下位に低迷している。10月2日のリーグカップ3回戦で3CBの中央でフル出場を果たしたが、監督はどう見ただろうか。
プレミアリーグは選手の入れ替わりも激しく、吉田も毎シーズンレギュラー争いをしながら戦ってきた。そのような中でやれる選手だからこそ、プレミアでやれるのだと改めて感じさせられる。
逆にそのプレミアリーグに初参戦するのが武藤嘉紀である。ブンデスリーガ、マインツでの3シーズンの活躍が認められ、4年契約でニューカッスルに完全移籍を果たした。
しかしながらやはりというべきか、プレミアの壁に苦しんでいるようだ。ここまで6試合の途中出場とラファエル・ベニテス監督も出場機会を与えながらフィットさせている段階であることが伺える。
特にベニテスも言及しているのがコンタクトプレー時のファール判定についてである。プレミアではフィジカルコンタクトでの競り合いの激しさが特徴であり、多少のことで笛は吹かれない。そのため当然そういった特徴を前面に押し出す選手も多く、FWである武藤にはそれに打ち勝つフィジカルが求められることになる。
武藤もドイツ、ブンデスリーガでは屈強な守備陣相手に互角に渡り合いボールをキープし、日本人離れした強さをみせていたが、プレミアはさらに上というところか。同じくドイツからプレミアに渡った香川真司や岡崎慎司もこの点には苦労しただけに、このハードルを越えることがこの先の安定した出場のキーポイントとなるだろう。
3.イタリア-セリエA なし
長友佑都がインテルからガラタサライに完全移籍(※17-18シーズン途中はローン移籍)し、98-99シーズンの中田英寿のペルージャ移籍から継続していたセリエA在籍選手がついに途切れることとなった。4.ドイツ-ブンデスリーガ 7選手
長谷部誠(34) フランクフルト 先3 EL 先1
香川真司(29) ドルトムント 先1途1 CL 途1
大迫勇也(28) ブレーメン 先5 1ゴール
原口元気(27) ハノーファー 先1途2
浅野拓磨(23) ハノーファー 先3途1
宇佐美貴史(26) デュッセルドルフ 先1途1
久保裕也(24) ニュルンベルク 先5
昨季2度目の契約延長を果たした長谷部誠はフランクフルトで5シーズン目を迎える。昨季のニコ・コバチ監督のもとでは3バックの中央でリベロとして起用されていたが、今季はそのコバチが退任しバイエルンと契約。
後任のアディ・ヒュッター新監督が4バックを採用したこともあり、開幕戦から出番はなかったが、ヨーロッパリーグ1節マルセイユ戦にインサイドハーフとして出場し、続く4節ライプツィヒ戦ではリベロ器用に応え、キッカー誌のベストイレブンにも選出。
そこからは連続で先発を勝ち取り、ブンデス在籍10年を越えるベテランらしい強かさでポジションを取り戻してみせた。
昨季ドルトムントと契約延長し、5シーズン目を迎えた香川真司。W杯後は休暇が与えられ、開幕戦からコンディションの関係もあってか出番のない状態が続いた。
やっと出番が回ってきたのは4節のホッフェンハイム戦。その試合で先発メンバー入りしたが、チームが好調なこともあってそこから先発が続くことはなかった。
ルシアン・ファブレ監督も選手選考に多くの選択があることを認めており、コンディションが仕上がった時期にどれだけアピールできるかが鍵となりそうだ。これまでも香川はシーズン通してコンディションに波があり、調子が上向けばブンデスでも存在感は放っていたため期待したい。
ケルンでの4シーズンの活躍が認められ、ブレーメンへと移籍した大迫勇也。8月のリーグカップ1回戦で早速、移籍後初ゴールを奪い、2節のフランクフルト戦でリーグ戦初ゴールとしっかり結果を出してみせた。
その後も先発出場し、序盤戦からしっかりレギュラーとして定着している。W杯でも見せたフィジカルの強さは誰もが知るところで、それだけに今季はよりゴールに繋がるプレーが見たいところだ。個人的には二桁の大台に乗せてほしいと願っている。
昨季途中にヘルタ・ベルリンから2部のデュッセルドルフにローン移籍した原口元気。そこで昇格に貢献し、今季は再び1部ハノーファーへ完全移籍することとなった。
プレシーズン中に負傷したという発表もあり、W杯休暇後も合流が遅れ、リーグカップ1回戦は欠場。その後のブンデス開幕戦でも途中出場、4節ニュルンベルク戦で初先発も途中交代などまだチームにフィットしていない様子だ。
アンドレ・ブライテンライター監督は昨季から原口を追っていたようで、得点を狙えるポジションでの起用も視野に入れているという。原口はドイツに来てから泥臭い役回りをこなして生き残ってきたが、今季は本来の持ち味であるゴールに迫る仕掛けをみられるだろうか。
原口と同じくハノーファーに移籍した浅野拓磨。16-17シーズンにアーセナルに加入して以来、ドイツのシュツットガルトでの出場が続いたが、今季はハノーファーでの挑戦となった。(どちらもローン移籍)
プレシーズンマッチでゴールを量産し、リーグカップ1回戦で早速ゴールを決めるなどブンデス開幕節の先発を勝ち取ることに成功。そこから連続で先発を続けたが、得点を奪えず、チームも勝つことができずに低迷し出場機会を減らしてしまう。
序盤から上位チームと当たったとはいえ、現在最下位と厳しい序盤戦となってしまった。浅野の場合は得点が奪えなくてもスピードという武器があるため、それを生かせる立ち回りを期待したいところだ。
昨季ブンデス2部では個の能力を発揮し、1部昇格に大きく貢献する活躍を見せた宇佐美貴史。アウクスブルクからデュッセルドルフへの完全移籍を希望していたがなかなかまとまらず、結果1年のローンという形で契約が成立した。
そのためプレシーズンの仕上げも遅れ、9月後半の5節レバークーゼン戦で初出場、そして6節ニュルンベルク戦で初先発となった。
なので宇佐美も出番はこれからといったところだが、これまで1部では守備と運動量の面で大きな課題があっただけに、今季はそこでどこまで勝負できるかを見ていきたい。
スイス、そしてベルギーリーグと地道に実績を積み重ねた久保裕也がついにブンデスリーガまでたどり着いた。今季はベルギーのヘントからニュルンベルクへの買取OP付きのローン移籍という形になった久保。
開幕節からさっそく先発フル出場し、その後も4戦連続で先発に名を連ねるなど上々のスタートを切ることとなった。この好調の要因として、スイス在籍も長くドイツ語を話せるため、日本人にとってのプレー以外での大きな障害となる言語面での苦労が少ないことや、W杯メンバーに選出されなかったことでコンディション面での心配がなかったことが考えられる。
5.フランス-リーグ1
酒井宏樹(28) マルセイユ 先6途1 EL
川島永嗣(35) ストラスブール 先0途0
昨季契約延長しマルセイユ在籍3シーズン目を迎える酒井宏樹。すでにチーム内でも主力という立ち位置であり、開幕から先発を勝ち取っている。準優勝を果たした昨季に続き、今季もヨーロッパリーグの舞台と並行しし試合をこなしていくことになる。
これだけ安定して出場し評価されている日本人選手は少なく、さらなるステップアップも望める位置にいるので飛躍を期待したい。
昨季で契約満了となり、メスを退団した川島永嗣。今季開幕前も以前のように無所属の状態が続いていたが移籍市場終了間際にストラスブールとの契約にこぎつけた。
立場としては第3ゴールキーパーとなるが、ヨーロッパの上位リーグで日本人ゴールキーパーとして経験を積んでいるのは川島以降はいない。本人の意志はもちろんだが、今後の日本人選手にとっても重要な存在であることには間違いない。