19-20マンチェスター・シティ序盤戦績~最終ラインに怪我人続出~

2019/12/05

マンチェスターC 試合分析 戦術

t f B! P L

序盤戦績

公式戦 19戦13勝3分3敗
 国内リーグ戦 12戦8勝1分3敗 35得点13失点
 得点トップ3 アグエロ9G スターリング7G シウバ5G 

昨シーズンのこの時期は無敗で乗り気ったが、今季の国内リーグ戦は5節ノリッジ(2-3)、8節ウォルバーハンプトン(0-2)12節リバプール(1-3)に敗れ4位。2位のレスター、3位のチェルシーとは勝ち点1差だが、今季はリバプールが負けなしで独走していることで差をつけられた。

CLグループステージではシャフタール(ウクライナ)、ディナモ・ザグレブ(クロアチア)、アタランタ(イタリア)と同じ組に入り、11得点2失点の3勝1分で安定して勝点を積み上げ首位をキープしている。

負傷離脱者

DF ストーンズ(2~8節)、ラポルト(4節~)、メンディ(1~5節)、ジンチェンコ(9節~)
MF ロドリ(10節~)
FW サネ(1節~)

今季誤算があったとすれば主力に多くの負傷者が出たことだろう。特にストーンズ、ラポルト、ジンチェンコと昨季の最終ラインを構成した選手が離脱したことで他のポジションから代役を入れて戦った。

特にCBラポルトは8月末から4カ月、サネに関しては8月上旬から6~7カ月の長期離脱予定となっている。

基本システムとメンバー構成

433をベースにしたシステムは今季も継続。

GKは最後尾からの攻撃の組み立ても担えるエデルソンが今季も正GKを務め、ブラボはリーグカップでの起用が基本となっている。

LSBは昨季と同じく本来中盤の選手であるジンチェンコを起用し攻撃に寄せる起用。10月中旬に膝の手術で離脱後は、負傷から復帰したメンディと新加入のアンへリーニョを併用している。RSBは以前から変わらずウォーカーが定位置。新加入のカンセロもCLが始まって以降はローテーションで起用されている。

CBはベテランのコンパニーが退団したことでストーンズラポルトオタメンディの3選手で2CBの枠を回す形になった。ところが、ストーンズとラポルトの負傷離脱によって一気に人材が手薄に。そのため本来中盤の選手であるフェルナンジーニョロドリが代役を務めることになった。

DMには新加入のロドリが開幕戦から起用され、その後も主力を担う。CMはデブライネギュンドアンダビド・シルバという昨季と変わらぬメンバー構成となっている。

RWGは昨季と同じく縦横無尽に動けるベルナルド・シウバと、ワイドに開いた位置から仕掛け、あるいはクロスを入れていくマフレズの併用。LWGはサネの負傷離脱によってスターリングが一人で担っている。CFも昨季と同じくアグエロジェズスの2人を起用しているが、最優先はアグエロとなる。

マンチェスター・シティの戦術

グアルディオラ体制3年目の今季は大きな人員の変化はない。多額の移籍金を払って獲得してきた選手を保持しながら勝ち続けてきた形を継続し、より成熟度や連携力を高め戦っていくシーズンとなっている。その具体的な形とは、相手に主導権を渡さずボールを支配し、攻撃機会を多く創出するサッカーをして得点を奪って勝つということ。

開幕戦のウェストハム戦(5-0)でもGKエデルソン、CBストーンズ、ラポルト、LSBジンチェンコ、DMロドリ、CMデ・ブライネと多くの選手から前線に縦パスを出すことで相手に出しどころを絞らせず、決定機を作り出し大勝している。

4節ブライトン(4-0)、6節ワトフォード(8-0)CL3節アタランタ(5-1)等のスコアを見ても分かる通り、圧倒的な攻撃力は今季も健在。アグエロをトップに置き、スターリング、ベルナルド・シウバ、ダビド・シルバ、デ・ブライネ、マフレズらが入れ替わり前線に飛び込む流動的な攻撃は、昨季から止めようがない。

なぜ敵チームは攻撃を止められないか?

それはパスの供給源の多さと、そのパスを相手ゴール前の密集地帯で正確にトラップしパス、シュートに持ち込める技術が高い選手が集まっているから。特にアグエロの働きは大きく、小柄ながら相手に負けない対人能力でスペースを作り、そこからゴールに結びつける力は代えが効かない存在だ。

とはいってもアグエロもベテラン選手の域に入り、負傷で離脱するリスクも抱えている。そこで22歳ながら在籍4年目のジェズスが世代交代を、といきたいところだが、ボックス内での対人能力や得点力の点でまだポジションを奪い取るまでのは至っていない。

新加入ロドリが主力に

今季の一番大きな変更点はといえば、中盤の底にスペイン人のロドリを開幕戦から先発起用していること。これまではフェルナンジーニョが務めてきたが、ベテランながら昨季は代役がおらず、負担が大きなポジションでもあった。

また、フェルナンジーニョはプレシーズン中にコパ・アメリカに出場しており、さらに負傷者の穴埋めにCBのポジションに入ったことで、序盤戦はロドリが定着している。

プレースタイルとしてはアトレティコ所属時と同じく、攻撃時のパスの供給源としての役割がメインでゴール前に走り込むようなことは少ない。守備時はカウンター起点の潰し役として高い位置で相手に寄せ、攻撃を遅らせるプレーを任されている。

試合分析~シティ敗戦の理由を探る~

ここでは近年常勝クラブと化しているマンチェスター・シティが前半戦で敗戦を喫した、ノリッジ、ウルバーハンプトン、リバプールの3試合でなぜ負けたのか考えていきたい。

ノリッジ戦、ウルブス戦での敗戦

5節ノリッジ戦では序盤にコーナーキックから失点。その後もオフサイドラインが合わずに裏に抜け出されて失点し、0-2とされながらも終了間際にアグエロの得点で1-2と追い上げる前半の展開。このくらいなら同点、さらには逆転という流れはありえた。

しかし後半、オタメンディが最終ラインで相手の寄せに対して甘い対応し奪われ●1-3とされてしまい、この軽率なミスが決め手となり今季初黒星を喫する。

8節ウルバーハンプトン戦では532で5バックを敷く相手のブロックを崩せず、それによって攻撃が停滞し得点が奪えなかった。特にシュート数18に対して枠内2と完璧に抑え込まれてしまった。この原因はウルブス側がシティ対策をしっかりしてきたことが挙げられる。さらにシティ攻撃陣に関して言えば、ゴール前に入っていく選手が少なく、アグエロさえ抑えていけばいいという相手からすれば守りやすい形ができてしまっていたことが理由だろう。

対応されたシティの攻撃戦術

ここではシティ相手に無失点に抑えたウルブスの対応を紹介する。

まずはシティが相手陣内でボールを保持している場面から。ここではウルブスは53のラインを敷いて、2トップと囲い込むようにしてボールを持つロドリ(赤線)を囲い込んでいる。これによって縦パスを通すコースはなくなった。

それに対し、ロドリが選択したのは右にサイドチェンジのパスを出し打開するという選択。

この左から右へのワイドな展開で揺さぶり、CFアグエロ、AMダビド・シルバ(赤線)の2人がゴール前のスペースへ走るこむ動作を取る。そのタイミングで右サイドで受けたのは右WGのマフレズがパスを入れ打開する。

これはシティの攻撃パターンのひとつだが、ウルブス最終ラインはしっかり対応し、3CBが相手より先に動き出しコースを消してたことでマフレズはパスを出せなかった。

こうして攻め目に欠く展開を続けている中で、相手のカウンターをオタメンディがスライディングで奪いに行くも交わされ、残ったフェルナンジーニョが1対2を作られ先制を許す。

この場面ではまだ相手陣内であり、2v2の状況だったにも関わらず、ファールで止めるわけでもなく一発カットにいってしまった。

終盤にもオタメンディが攻撃参加したところを戻りきれず、またフェルナンジーニョも裏へのパスに対応できずに追加点を奪われ敗北した。

このように、敗戦の理由は主にレギュラーメンバーに負傷者の出たことと、それによる代役選手が任務をこなせず、守備時に最終ラインの選択ミスが出てしまったことが原因と考えられる。

攻撃に比重をおいている分リスクが高いのは昨季から変わりはないが、毎回大量得点で勝つことは不可能なため、こういった小さなミスが昨季の序盤と比べて増えたことが敗戦に繋がっている。

リバプールとの首位決戦で敗れる

とはいえ昨季は11試合9勝2分、今季は8勝1分2敗と大きく崩れているわけではない。ただし今季はリバプールが無敗で勝ちを重ねていることもあり12節の直接対決は前半戦の重要な一戦だった。

ところが試合は●1-3と敗れ、順位も4位まで下げる痛い敗戦となってしまう。

このアウェイの試合では、リバプールの組み立てに対して、積極的に前から潰しに行く策をとった。ところがその勢いを利用され、開始から15分の間に2失点を喫し、流れを呼び込むことができなかった。

1失点目はアーノルドの疑惑のハンドが流されるといった不運や、ファビーニョが見事なミドルシュートを打ったという致し方ない点もあったが、2失点目に関してはハイプレスに行ったところをサイドチェンジでかわされ、簡単に自陣へ持ち込まれ、最終ラインのフェルナンジーニョアンヘリーニョがサラーに対応できず決められてしまっている。

リバプールのシティ守備打開

ここではシティ2失点目のシーンを見ていく。先制されたシティは、リバプール最終ラインの組み立てに対して前線3枚+中盤2枚がボールを奪いに行く。特に右CMデ・ブライネが最前線まで出てボールを追った。

奪えれば一気に数的優位のカウンターで得点のチャンスにもなるが、逆に言えば前がかりになったシティの最終ラインと中盤の間には大きなスペースができてしまう。

アーノルド(赤線)はそこを見逃さず、左サイドへ大きくサイドチェンジのパスを出した。

こうして一気にシティ守備網を突破したリバプール。左SBのロバートソン(赤線下)がフリーでパスを受けるとそのまま持ち上がり、逆サイドからアンヘリーニョの裏に走り込むサラー(赤線上)に高精度のクロスを入れ追加点を決め、シティは早々に2失点を喫した。

また、この試合では正GKのエデルソンが前の試合で負傷し、今季はリーグカップ戦2試合のみの出場だった控えのブラボであったところも影響したか。

持ち味の攻撃に関してもアグエロがゴール前で孤立し、2人目、3人目として中に飛び込んでいくような選手もいないため、終盤に1点返すも試合内容としては完敗だった。

結局、リバプール戦でも控えの選手が負傷した主力の穴を埋めきれず、相手にそこを突かれて負けてしまったという試合となってしまった。ペップの構築する組織化された攻撃的なサッカーは、非常に小さな連携のミスでも命取りになってしまうという面が見えた3戦といえる。

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