浦和、G大阪、鳥栖、川崎、FC東京はどのように戦ったのか?2015年J1のデータ分析(1~6節)

2015/05/02

Jリーグ 浦和レッズ

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今年から2004年以来のステージ制となったJ1リーグ。そこでファーストステージ全17節の約3分の1が終わった6節時点での各チームの分析をしていきたい。分析と一言でいっても戦術や個々のプレーと様々な項目があるが、ここではFootball LAB[フットボールラボ]で公開されている数値データを用いて、1~4位のチームをメインに各チームにどういった特徴が出ていたかを調べてく。

なお、ここではチーム部門のデータとして、得点・失点数の他によりチームカラーが現れているであろう①シュート数②枠内シュート数③パス数④クロス数⑤ドリブル数⑥インターセプト数⑦アタッキングサード侵入回数⑧攻撃回数⑨支配率の9つの項目を使用している。選手部門のデータでは①攻撃、②パス、③ドリブル、④シュート、⑤守備のデータを使用した。データの定義についてはデータ元サイトである各プレー定義とエリア区分を確認してもらいたい。


1位 浦和レッズ ~攻撃戦術と守備陣の安定、豊富なFW陣~

惜しくも2位で昨シーズンの優勝を逃した浦和。ペトロヴィッチ体制4年目となる今季はここまで無敗で首位を保っている。日程面で見ても湘南、山形、松本という昇格3チームと序盤に対戦し、きっちり3勝できたことで好成績を呼び込んだ。

チームの部門別データを見ていくとシュート数(リーグ1位)アタッキングサード侵入回数(2位)支配率(2位)、さらにパス数(3位)クロス数(3位)と攻撃に関わる多くの部門で上位を占めている。加えて最小失点(1位)インターセプト数(3位)と守備面でも安定した成績を残していることがわかった。このデータから見ても昨季から引き続き、守備を意識したポゼッションサッカーを継続し結果を残している事実が見えてくる。

具体的な攻撃面での特徴といえば、ここまで8人の得点をあげている点だろうか。得点数自体は他のチームと比べても抜きん出ているわけではないのだが、どこからでも点の取れるチームであり、得点を特定の誰かに依存していないのはこれからもプラスになりうるだろう。

1節 興梠 石原 武藤
2節 興梠 石原 梅崎
3節 興梠 石原 李
4節 ズラタン 梅崎 高木
5節 ズラタン 石原 高木
6節 ズラタン 武藤 梅崎

上の表は試合ごとの前線3枚の組み合わせを表している。浦和は3421のシステムを採用し、前線は1トップ2シャドーの形を採るのが特徴。今季も新加入の武藤雄樹、石原直樹、ズラタン、高木俊幸らをローテーションで起用しながらうまく使い分け、競争心を煽りながらペトロヴィッチ監督は試合を進めている。豊富な駒を揃える浦和だからこそ可能な術といえる。

リーグ最小失点の守備面に関しては、全試合で森脇 良太、那須大亮、槙野智章のベテラン3人が3バックを形成。さらに忘れていけないのは西川周作の存在だろう。高いラインを敷く浦和にあって裏のスペースに抜けた相手選手のシュートを防ぐ守護神として、安定したセービングを見せている。ビルドアップ時の組み立て参加も含めて、JリーグのGKの中ではひとつ抜きん出ている。

個人部門を見ていくと、攻撃の中心はパス部門で(リーグ2位)の数値を残しており、組み立ての主軸としてチームを引っ張っているキャプテンの阿部勇樹が担う。他部門で目立つのは2年目の関根貴大。ドリブル部門(チーム1位)、クロス部門(チーム1位)と育成出身選手として競争の激しいチーム内で出場機会を得て活躍した。

優勝に向けて首位をキープするための課題を挙げるとすれば、上記の得点パターンに関してだろうか。これは逆に言えば困ったときのエースがいないとも言えるわけで、ここ重要な試合でどう影響するか、あるいは誰が決めるのかという部分が見どころとなりそうだ。



2位 ガンバ大阪 ~手堅い試合運びと違いを見せる宇佐美の爆発~

Jリーグ、ナビスコ杯、天皇杯の3冠を飾った昨シーズンのG大阪。開幕から1分1敗とスタートで出遅れたものの、その後は4連勝で今季もここまで2位と3年目となる長谷川健太監督の指揮のもとで好順位につけている。

部門別データを見ていくと、秀でているの12得点で得点数(2位)のくらいで他に目立った数値は出ていない。逆にインターセプト数(ワースト)で、このデータを見ても分かる通り、G大阪は前からプレッシングをするサッカーを採用せず固いブロックを作ってリスクを負わないゲーム運びを見せている様子が見て取れる。その裏にはACLと平行して戦っていかなければならないというチーム事情もあるだろう。

それでもここまで安定して勝てるのは、6試合7ゴールと高い決定力を見せる宇佐美貴史の存在がある。個人部門でもドリブル部門(リーグ2位)シュート部門(リーグ3位)と前線で2トップを組むパトリックとともにJ屈指の破壊力を誇るチームの攻撃の核を担っている。昨シーズン序盤はこの宇佐美の負傷離脱もあってなかなか勝ちを積み重ねられなかったが、今季はここに関しては問題なさそうだ。

昨シーズン後半のサッカーを継続できれば今季も盤石であるため、あとはACLとどう折り合いをつけて戦い抜いていけるかがカギとなる。



3位 サガン鳥栖 ~堅守速攻のチームスタイルを継続~

昨シーズンは途中首位に立ちながらも監督交代劇などもあり5位に終わった鳥栖。今季は森下仁志新監督を迎え序盤はここまで3位をキープしている。

このチームのデータは非常に偏りがあり、やっているサッカーを体現している数値が出ている。パス数(ワースト2位)クロス数(ワースト1位)ドリブル数(ワースト2位)アタッキングサード侵入回数(ワースト2位)とこれだけを見るとまさか上位を争うチームとは思えないような数値がでており、他にも枠内シュート数も決して高くない。

にも関わらずこの順位でいる訳とは?と疑問に思う人もいるだろう。そんな鳥栖の中にも一つだけ秀でた部門があった。それがインターセプト数(1位)という部門である。

鳥栖のサッカーを見ている人ならご存知だろうが、このチームは運動量を武器に粘り強くボールを追いかけ、奪ってからは前線に素早く展開する堅守速攻が売りのチームとして、J1の中でも特徴的な戦術をベースに近年は戦い続けてきた。今季もそのサッカーを継続しながら戦っているというのがこのデータからわかるだろう。

個人部門ではキム・ミヌがドリブル(チーム1位)、クロス(チーム1位)と攻撃の中心を
担い、最後のフィニッシュを任されるエース豊田陽平がここまで4ゴールを挙げている。

このサッカーでこの上位にいる事自体がなかなか稀な例であるといえるだけに、是非とも上位に食い込んでもらいたいと思う。



4位 川崎フロンターレ ~攻撃部門で他を圧倒、残る課題は?~

ACLと並行して戦いながら中間地点で3位につけるも、最終的には6位に終わった昨シーズンの川崎F。今季もここまでは4位でタイトルを狙える位置につけている。

ポゼッションサッカーを全面に押し出した攻撃に持ち味を持つ風間八宏監督も4年目の指揮となり、チームスタイルは完全に根付いた。チーム部門別に見ても、最多得点(1位)をはじめとして、シュート数(3位)枠内シュート数(2位)パス数(1位)ドリブル数(2位)アタッキングサード侵入回数(1位)支配率(3位)と攻撃部門のほとんどでトップ3に入る成績を残した。

個人部門を見ると、中村憲剛が攻撃(リーグ1位)、パス(リーグ1位)と相変わらずの存在感を見せ、レナトがドリブル(リーグ1位)、角田誠が守備【※ボールを奪い攻撃に繋げたプレー】(1位)、そして2シーズン連続得点王となった大久保嘉人が5ゴールと持ち味を発揮している。

あとは上位チームの中では目立つ8失点という数字を減らす、あるいはそれ以上に得点を増やすことができれば悲願のリーグ優勝につながるはずだ。



5位 FC東京 ~イタリア流の浸透と武藤の存在~

イタリア人として初のJリーグ監督となったマッシモ・フィッカデンティを迎え挑んだ昨シーズンは、なかなか注意から抜け出すことができずに結局9位に終わった。2年目の今年はここまで4位と同勝ち点の5位に付け、スタートから上位を狙える位置につけている。

チームデータを見ていくと上位につけているのは最小失点(2位)くらいでシュート(ワースト2位)枠内シュート(ワースト2位)など、フィニッシュであるシュート関係の攻撃数値高くない。それながらもクリーンシート4試合で上位いることからも、イタリア流の守備戦術が浸透している証拠と言えそうだ。

加えて忘れてはならないのが、武藤嘉紀の活躍だろう。シュート(リーグ1位)で6試合5得点と、比較されることの多い同世代の宇佐美とともにJでは存在感を見せている。日本代表としても活躍し、チェルシーへの移籍といった噂話まで出る中でしっかり結果を残しているのは立派だ。

これからの過密日程の中でもこのサッカーを実行できるようであれば優勝争いに加わる可能性は十分にある。



その他のチーム 6~18位


6位 サンフレッチェ広島
最小失点(3位) シュート(2位) ドリブル(1位)
インターセプト(3位)アタッキングサード侵入回数(3位) 攻撃回数(ワースト1位)
青山敏弘 攻撃(リーグ3位)パス(リーグ3位)
ミキッチ ドリブル(リーグ2位)
柏好文 クロス(リーグ2位)


7位 ベガルタ仙台
パス(ワースト3位) 支配率(ワースト2位)


8位 鹿島アントラーズ
枠内S(2位)


8位 名古屋グランパス
枠内S(1位) クロス(2位)
永井謙佑 クロス(リーグ2位)


10位 ヴィッセル神戸
ドリブル(3位) インターセプト(2位)

チョン・ウヨン 守備(リーグ1位)


11位 横浜F・マリノス
クロス(ワースト2位)


12位 柏レイソル
失点(ワースト3位) パス(2位) インターセプト(ワースト2位) 支配率(1位)
クリスティアーノ 攻撃(リーグ2位)


13位 湘南ベルマーレ
得点(ワースト3位) クロス(3位) 攻撃回数(3位)
三竿雄斗 クロス(リーグ1位)


14位 アルビレックス新潟
得点(ワースト3位) アタッキングサード侵入回数(3位) 攻撃回数(1位)
ラファエル・シルバ シュートリーグ2位で5得点  


15位 松本山雅
パス(ワースト1位) ドリブル(ワースト1位)
アタッキングサード侵入回数(ワースト1位) 攻撃回数(ワースト2位)
支配率(ワースト1位)


16位 清水エスパルス
失点(ワースト2位) クロス(1位) 攻撃回数(2位)
犬飼智也 守備(リーグ1位) 


17位 モンテディオ山形
得点(ワースト1位) ドリブル(ワースト3位) インターセプト(ワースト2位)


18位 ヴァンフォーレ甲府
得点(ワースト1位) 失点(ワースト1位) シュート(ワースト1位)
枠内S(ワースト1位) クロス(ワースト3位) インターセプト(ワースト2位)


ステージ制となりより早い段階から勝ちを積み上げる必要のでてきた今シーズン。今後はリーグの3分の2が終わる5月中旬の12節のデータを使用しこの数値がどう変化し、順位が変動していくかをまた見てきたい。




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